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「化成」手放す日立 選択と集中狙いさらなる「売却劇」も? - J-CASTニュース

   日立製作所が、グループの中核と位置付けてきた東証1部上場の化学大手、日立化成(株式の51%を保有)の売却を巡り、総合化学メーカーの昭和電工に買収の優先交渉権を与えることを決めた。

   グループの「御三家」の一角と位置付けられてきた有力子会社を手放すことで、「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させるというグループ再編は最終段階に入る。

  • 日立グループの今後は…(Kakidaiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

    日立グループの今後は…(Kakidaiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

賭けに出た昭和電工の思惑

   日立製作所は、今春から買い手を入札で募る手続きを始め、複数の事業会社や投資ファンドと接触し、交渉を重ねてきた結果、昭和電工が有力になった。昭和電工は2019年11月26日、各種報道を受け、「企業価値向上を目的に、日立化成の株式取得を含め、常にさまざまな検討を行っている」とのコメントを発表。株式公開買い付け(TOB)によって発行済み株式のすべてを取得し、日立化成を完全子会社化することも視野に入れているとみられる。現時点の株価で計算すると買収総額は9000億円規模になる可能性がある。

   日立化成はスマートフォン用の半導体の封止材、リチウムイオン電池の負極材など世界シェアの高い機能材料を持つ。その買収には三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学など総合化学メーカーが関心を示し、中でも規模で劣る三井化学が最も乗り気だったが、今春に売却計画が報じられて以降、日立化成の株価は右肩上がりで上昇し、年初の1500円台から、直近で4000円台へと2倍以上の水準に上昇したため、断念したという。

   そんな中、昭和電工は連結売上高(9900億円)に匹敵する巨額の買収という大きな賭けに出た。成功すれば、売上高は単純合計で1兆7000億円と、1兆5000億円規模の三井化学、信越化学工業を上回る。昭和電工はサーバーなどに使うハードディスクや製鉄用の黒鉛電極などで世界トップのシェアを持ち、日立化成の電池分野などでの競争力を取り込み、次の成長につなげる狙いがある。

一見強力な「日立化成」というカードだが...

   日立製作所は鉱山で使う小型モーターの開発から出発。戦後、高度成長の波に乗って重電から家電まで幅広く手掛ける総合電機として発展した。バブル崩壊後の景気低迷のなか、グローバル化の荒波も受けて家電の低価格化などで収益が低迷したが、「総合」の旗を掲げ続けた。それも、2008年のリーマン・ショックを受け、2009年3月期には7873億円という当時の日本の製造業として過去最大の最終赤字を計上するに及び、「選択と集中」に大きく舵を切った。

   具体的には、事業や子会社の再編や売却を思い切って進めた。2012年にハードディスクドライブ(HDD)事業を米ウエスタン・デジタルに売却、2014年には三菱重工業と火力発電事業を統合、2017年に半導体製造装置の日立国際電気などを米投資会社に、2018年にはカーナビのクラリオンを仏社に売却するなどの結果、かつて1000社を超えていた連結子会社数は2018年度末時点で840社にまで減少。20以上あった上場子会社も、今や日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーの4つだけになった。

   日立化成は日立金属とともに、ものづくりの基礎である素材を担い、一見、IT時代にふさわしい子会社に思える。ただ、これらの素材は景気変動の影響を受けやすく、安定して利益を稼ぐのが難しくなっていた。日立化成の業績は、2018年度の売上高が6810億円、売上高営業利益率は5.3%、2019年度の見通しも、それぞれ6400億円、4.7%にとどまる。

投資家はすでに他の子会社に注目

   日立製作所は2019年5月に発表した中期経営計画(2019~21年度の3年間)で、2018年度9兆4800億円の連結売上高を3年後に10兆円以上に、売上高営業利益率を8%から10%超に引き上げるという目標を掲げており、利益率が低迷する日立化成は、デジタル化の中で素材~製品という開発過程での相乗効果が低下していることもあって、これ以上持ち続ける必要性はないと判断したとみられる。

   中期経営計画は低採算事業売却の一方で、強みがあるエネルギーなどのインフラで稼ぎつつ、IoTなどに重点投資する方針を明確にした。具体的に、顧客の工場のデータを収集・分析して最も効率的に生産したり、鉄道運行で列車の本数を混雑度に応じて自動的に調整したりするといったシステムや、産業用ロボットを活用した高効率の物流システムなどを柱と位置付け、3年間で2.5兆円の投資をする計画だ。

   こうした流れの中で、日立化成の次は日立金属が注目されている。10月、2020年3月期の連結最終損益の見通しを285億円の黒字から470億円の赤字に引き下げ、11年ぶりの最終赤字に転落する見込み。にもかかわらず、売却の思惑から、株価は過去1年の1100~1300円のボックス圏の動きから、10月以降、右肩上がりに転じて足元で1500円台に乗せている。

   同社も、日立建機も、日立ハイテクノロジーズも、売上高は7000億~9500億円の規模を誇る優良企業だけに、市場はその動向を注視している。

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December 12, 2019 at 05:00AM
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