サムスン電子ジャパンから、Androidタブレット「Galaxy Tab S8+」が登場した。国内でGalaxyブランドのAndroidタブレットが発売されるのは実に7年ぶりと、久々の登場となる。すでに山口真弘氏の記事で電子書籍ユースを中心とした使い勝手を紹介しているが、本稿では全般的な使い勝手を紹介する。すでに発売中で、価格は115,500円。
強度にも優れるシンプルな薄型軽量筐体
Galaxy Tab S8+は、2月に開催された「Galaxy Unpacked 2022」で発表されたGalaxyシリーズのAndroidタブレット最新モデル。このところは海外のみでの発売が続いていたが、日本国内でのタブレット需要の高まりや、Galaxy Tabシリーズ発売への根強い要望があったことを受けて、久々の登場となった。
Galaxy Tab S8シリーズは、11型ディスプレイ搭載の「Galaxy Tab S8」、12.4型ディスプレイ搭載の「Galaxy Tab S8+」、14.6型ディスプレイ搭載の「Galaxy Tab S8 Ultra」の3モデルが用意されている。日本では、まずGalaxy Tab S8+が発売となり、6月以降にGalaxy S22 Ultraが発売される予定となっている。
Galaxy Tab S8+の主な仕様は、以下にまとめたとおりだ。海外モデルでは、5G対応モデルなどモバイル通信対応モデルもラインナップしているが、日本ではWi-Fiモデルのみの発売となる。
SoC | Snaodragon 8 Gen1 |
---|---|
メモリ | 8GB |
OS | Android 12.0 |
内蔵ストレージ | 128GB |
外部ストレージ | microSD(最大1TB) |
ディスプレイ | 12.4型有機EL「Super AMOLED」 WQXGA+(2,800×1,752ドット)、アスペクト比16:10 リフレッシュレート最大120Hz、タッチレスポンス240Hz |
Sペン | 低遅延(レイテンシ2.8mm)、ジェスチャ/リモート操作対応 |
背面カメラ | 1,300万画素/F値2.0 広角カメラ、600万画素/F値2.2 超広角カメラ |
前面カメラ | 1,200万画素/F値2.4 超広角カメラ(画角120度) |
オーディオ | AKGクアッドスピーカ、Dolby Atmos対応 |
通信機能 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠無線LAN Bluetooth 5.2 |
生体認証機能 | ディスプレイ内蔵型指紋センサー |
外部ポート | USB Type-C |
バッテリ容量 | 10,090mAh |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 285×185×5.7mm |
重量 | 567g |
カラー | グラファイト |
本体デザインは、タブレットとして非常にシンプルなものとなっている。カラーも、メタリック調のグラファイトのみだ。見た目には、これといって特徴があると感じられないものの、このシンプルさによって落ち着いた印象や高級感が高められている。
筐体素材には、アーマーアルミニウムを採用。表面はなめらかな手触りの仕上げとなっており、手に持ってもとても感触が良い。また、指紋の痕が付きにくい点も嬉しい部分だ。
そして、Galaxy Tab S8+を手にして真っ先に感じるのが、その薄さと軽さだ。サイズは285×185×5.7mm(幅×奥行き×高さ)と、ディスプレイサイズの大きからフットプリントこそやや大きいものの、厚さは5.6mと、6mmを切る薄さとなっている。この圧倒的な薄さによって、手に持ってもゴツゴツとした印象が少なくなっている。
重量は567gと、600gを切っている。競合になると考えられるiPad Pro 12.9インチと比べると約115gも軽く、軽々と持てる印象だ。手に持って使うことの多いタブレットとしては、この軽さも大きな魅力となるはずだ。なお、実測の重量は565gと、公称よりもわずかに軽かった。
しかも、この薄くて軽い筐体ながら、優れた強度を合わせ持っている点も嬉しい部分。ディスプレイ側には米国Corning製強化ガラス「Gorilla Glass 5」を採用しており、筐体のアーマーアルミニウムと合わせて申し分ない強度を実現。強度についての具体的な仕様は公表していないものの、実際に筐体を強くひねってもほとんど歪むことがなく、安心して利用できる共同を備えていることが実感できる。
外部ポートは、右側面にUSB Type-Cのみを用意。また、上部側面にはmicroSDカードトレイがある。物理ボタンは、上部側面に電源ボタンとボリュームボタンを用意。この他、下部側面にはキーボードカバー用の接点が用意されている。
生体認証機能としては、ディスプレイ内蔵型の指紋認証センサーを搭載。センサー搭載位置は、ディスプレイ右側面の中央付近で、認証速度は十分に高速だった。なお、前面カメラを利用した顔認証にも対応しているが、3Dカメラではないため認証精度があまり高くない点には注意したい。
WQXGA+表示対応の12.4型有機ELディスプレイを搭載
ディスプレイには、WQXGA+(2,800×1,752ドット)表示対応、アスペクト比16:10の12.4型有機ELパネル「Super AMOLED」を採用。ディスプレイの具体的なスペックは公開されていないものの、Super AMOLEDということで、優れた発色性能を備えるとともに、HDR10+準拠のHDR表示対応、100,000:1の高コントラスト比に対応するものと考えられる。
ディスプレイ表面は光沢処理となっており、外光の映り込みはやや激しい印象。このあたりは、Sペン対応などもあり、非光沢処理が難しい部分もある。それでも、Super AMOLEDの採用と合わせて、発色の鮮やかさは群を抜いており、写真や動画も非常に鮮やかな発色で表示できる。これは、Galaxy Tab S8+が映像クリエイターなどのハイエンドユーザーをターゲットとしていることを考えると、当然の選択と言っていいだろう。
ただ、個人的には、アスペクト比が16:10ではなく3:2でも良かったのではないか、と感じる。とはいえ、16:9ではないため、大きな不満点ではないはずだ。
合わせてGalaxy Tab S8+搭載のSuper AMOLEDは最大120Hzの高リフレッシュレート表示に対応。リフレッシュレートを120Hzに設定すると、消費電力はやや増えるものの、スクロール時のなめらかさが大きく高まる。実際にWebページなどを高速にスクロールしてみると、表示文字のなめらかさが大きく向上することが実感できる。長時間のバッテリ駆動が不要な使い方をするなら、リフレッシュレートは常に120Hzに設定して利用したい。
PCのサブディスプレイとしても利用可能
Galaxy Tab S8+のディスプレイまわりの機能で便利と感じたのが、PCのサブディスプレイとして利用できる部分だ。
この機能は「2番目の画面」と呼ばれる機能。Wi-Fi経由でディスプレイ表示を行なう、いわゆるMiracastをベースとした機能で、Miracast対応のPCと接続することで、Galaxy Tab S8+をPCのセカンドディスプレイとして利用可能となる。
利用時には、Galaxy Tab S8+で画面上部からスワイプインで表示されるメニューから「2番目の画面」を選択するとMiracastの待機モードとなるので、その後PCから接続するだけだ。なお接続モードとしてはレスポンス優先の「スケッチ/ゲーム」と、スムーズな表示優先の「動画」の2種類が用意されている。
実際に、Windows 11搭載のノートPCと接続してみたところ、非常に簡単にセカンドディスプレイとして利用できた。また、Galaxy Tab S8+側のタッチ機能も有効で、タッチやSペンでWindowsを操作することも可能だった。
そして、何より驚いたのが、Miracast接続にもかかわらず、遅延が少ないという点だ。まず、レスポンス優先のスケッチ/ゲームモードで接続してみたところ、ほとんど遅延を感じないほどだった。たまにマウスカーソルがわずかに引っかかるように感じることもあるが、ほとんど遅延なく追従し、まるで有線接続のディスプレイかのような感覚で利用可能だった。
動画モードで接続しても同様で、いずれも遅延は非常に少なかった。厳密には遅延はあるはずだが、実際に使ってみても遅延をほとんど感じることがないため、非常に便利に活用できると感じた。
Miracastということで、無線LANの状況によっては遅延を感じることもあるだろう。今回は、ノートPC、Galaxy Tab S8+、無線LANルータともにWi-Fi 6対応だったことも、低遅延かつ安定して利用できた要因とも考えられる。そのため、可能な限りWi-Fi 6環境で利用したいところだ。
唯一残念なのが、Galaxy Tab S8+のディスプレイ解像度をフルに活用できない点で、表示解像度は最大で2,560×1,440ドットとなる。これはMiracast側の制限なので仕方のない部分だが、少々残念だ。とはいえ、この点を差し引いても、十分便利に活用できることは間違いないだろう。
Sペンは非常になめらか、Clip Studioもプリインストール
Galaxy Tab S8+は、標準で専用スタイラスペン「Sペン」が付属し、ペン入力が可能となっている。Sペンの詳しい仕様は公表されていないが、Galaxy SシリーズやGalaxy NoteシリーズのSペン同様に、筆圧検知は4,096段階に対応するものと考えられる。そのうえでGalaxy Tab S8+では、レイテンシが2.8msと低遅延仕様となっている。これによって、ペンへの追従性に優れ、紙にペンで書いている場合と遜色のない書き心地を実現しているという。
実際にSペンでの手書きを試してみても、非常になめらかな書き心地を実感できる。素早くペンを動かしても、しっかりペン先に追従して線が書き込まれるのは、非常に気持ちがいい。Galaxy NoteのSペンもなめらかに書けるが、タブレットの大画面で書ける点もあって、心地よさはかなりのものだ。
この他、ペンのボタンを押してペンを上下に動かすなどのジェスチャで各種操作を行なうジェスチャ機能もサポートしている。
Sペンは、本体内に収納できないものの、背面の背面カメラ横にマグネットで装着し収納できるようになっている。また、マグネット装着と同時に内蔵バッテリの充電も行なわれるのも便利だ。
ペン入力アプリとしては、Galaxy Noteシリーズでもおなじみの「Galaxy Notes」をはじめ、セルシスのペイントアプリ「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」もプリインストールされる。CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)は、イラストレーターや漫画家など、プロのアーティストも利用するペイントアプリとしておなじみで、非常になめらかな書き心地を実感するSペンとの相性も非常に優れている。筆者は絵心がまったくないため、たいして活用できる気がしないものの、プロのクリエイターやアーティストにとって、Sペンとクリスタの組み合わせは非常に心強く、創作活動にも大いに活躍してくれるはずだ。
また、CLIP STUDIO PAINT for GalaxyをインストールしたGalaxyスマートフォンとの連携し、スマートフォン側にカラーサークルなどの各種機能を表示して操作できる「コンパニオンモード」が利用可能となる点も大きな魅力。
例えば、Sペン対応の「Galaxy S22 Ultra」と組み合わせることで、Galaxy S22 Ultra側を「コンパニオンモード」に設定するとともに、Galaxy S22 Ultra側の各種機能をGalaxy Tab S8+のSペンで操作できる。Galaxy Tab S8+単体よりも快適な作業環境を実現可能で、プロのクリエイターやアーティストにとって見逃せない機能となるはずだ。
タブレットながらカメラはなかなか高品質
Galaxy Tab S8+の背面カメラは、1,300万画素/F値2.0 広角レンズと、600万画素/F2.2 超広角レンズのデュアルレンズ仕様のカメラを搭載している。一般的に、タブレットのカメラにはスマートフォンほど高画質が求められないことが多いが、Galaxy Tab S8+の背面カメラはなかなか高品質だ。
明るい場所での撮影は、スマートフォンのカメラと比べても十分遜色のないレベルだ。特に広角レンズの描写力は十分優れており、メモ程度ではなく、十分にカメラとして活用できる印象だ。また、明るい場所での動画も十分なクオリティだ。手に持ってラフに撮影してもしっかりと手ブレ補正が効き、安定した動画が撮影できた。
加えて、Galaxyシリーズスマートフォンのカメラにも用意されている夜景撮影モード「ナイトモード」も搭載。暗い場所も十分に明るく鮮やかに撮影できる。
さすがに本体サイズが大きいため、スマートフォンのような機動性は期待できないものの、一般的なタブレットのカメラとは異なり、メモ程度以上の撮影が可能なことで、活用の幅が広がるはずだ。
前面カメラは、1,200万画素/F値2.4の超広角レンズの組み合わせ。こちらは自撮り用というよりは、リモート会議などで快適に利用できるものと考えた方がいいだろう。高画素センサーの搭載で、フルHD超の高品質映像でリモート会議が行なえる。画角が120度の超広角仕様のため、会議室などで複数人が集まってリモート会議を行なう場合でも参加者全員を余裕で捉えられる。
また、画面内の顔を検出して、自動的に顔が中心に来るように自動的にトリミングする機能も搭載。トリミング機能を利用すると画質はやや低下するものの、常に自分が中心に撮影されるとともに、無駄に広い領域が写り込まないため、リモート会議で扱いやすい機能だ。
加えて、マイクを3基搭載し、ノイズキャンセルによって声のみをクリアに相手に届けることも可能。こういった機能が用意されていることからも、リモート会議での利用を想定していることがよくわかる。
キーボードカバーを利用すればノートPCライクに利用可能
Galaxy Tab S8+には、オプションでキーボードカバー「Book Cover Keyboard」が用意される。このキーボードカバーは、底面に取り付け、ディスプレイ面のカバーとしても利用できるキーボードと、背面に取り付け、キックスタンドとしても利用できる背面カバーの2ピース構成となっている。
キーボードは英語配列のみが用意される。主要キーのキーピッチは実測で約18.5mmとフルピッチではないが、特に違和感なくタッチタイプが可能。また、手前にはクリックボタン一体型のタッチパッドも用意。キーボード自体の剛性はそれほどないが、一般的なタブレット用キーボードカバーとほぼ同等レベルの使い勝手と言える。
背面カバーは、Galaxy Tab S8+の背面全体を覆うとともに、中央付近から約170度開閉するキックスタンドも備えており、Galaxy Tab S8+を自立させて利用できるようになる。合わせて、カメラ横にはSペンを収納するための凹みも用意。背面カバーを利用すれば、Sペンも安心して携帯可能となる。
合わせて、キーボードカバーをGalaxy Tab S8+に装着すれば、PCライクのUIを実現する「DeX」モードに自動的に切り替えることも可能(もちろん、自動的に切り替わらない設定でも利用可能)。キーボードカバーを取り付けてDeXモードにすれば、ノートPCに近い感覚で利用でき、ビジネスシーンでの活用に便利だ。
ただ、キーボードカバーとキックスタンドは、そこそこ重量がある。実際に、Galaxy Tab S8+にキーボードカバーと背面カバーを装着し、Sペンも加えた重量を計測すると、1,084gと1kgを超えてしまった。キーボード、背面カバーともある程度の剛性を確保するとなると、この程度の重量が不可欠になるのは分かるが、せっかくのGalaxy Tab S8+の軽さが失われてしまう点は少々残念に感じる。
性能は申し分なし
では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しておく。今回は、UL LLCの「PCMark for Android」と「3DMark」の結果を紹介する。
結果は下に示したとおりで、PCMark for Android、3DMarkともに申し分ないスコアが得られている。Galaxy Tab S8+では、冒頭に紹介しているように、Qualcommの最新フラッグシップSoCのSnapdragon 8 Gen1が採用されており、そのパフォーマンスがしっかり引き出せていると言える。これなら、通常の利用はもちろんのこと、ゲームやクリエイティブ作業も快適にこなせるはずだ。
続いて、バッテリ駆動時間も検証してみた。検証にはPCMark for Androidの「Work 3.0 battery life」を利用し、ディスプレイ輝度50%、Wi-Fi有効、ディスプレイのリフレッシュレートは60Hzで検証した。結果は8時間10分と、まずまずの結果だった。ディスプレイサイズや、ディスプレイが有機ELパネルであることを考えると、十分満足できる結果と言っていいだろう。
高性能・高機能タブレットとして魅力的な存在
このようにGalaxy Tab S8+は、表示品質に優れる有機ELディスプレイの搭載や、薄型軽量筐体、Sペンによるプロも納得の軽快なペン入力、十分な品質を備えるカメラなど、非常に豊富な機能が満載で、Galaxyシリーズのフラッグシップタブレットらしい製品に仕上がっている。
価格は11万5,500円と高価ではあるが、その金額に見合う価値は十分にあると感じる。そのため、軽快なペン入力が行なえ、性能もトップクラスの高性能タブレットを探しているなら、今真っ先に考慮すべき製品と言っていいだろう。特に、プロのクリエイターに自信を持ってお勧めしたい。
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