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72年経って初の全面改良 ランドローバー新型の出来は - 朝日新聞デジタル

 英ランドローバーが誇るRV(レクリエーションビークル)の元祖的存在「ディフェンダー」。英ジャガー・ランドローバー日本法人によって、今秋にも新型のデリバリーが開始される。伝統の英国ブランドの実力を試乗で探った。

先代は1948年デビュー

 初代ディフェンダーは、トヨタ自動車「ランドクルーザー」や独メルセデス・ベンツ「Gクラス」といった、悪路走破を目的とした四輪駆動車としてのRVの元祖とも言える存在。そして、ランドローバーの歴史そのものと言える。

 1948年に製造開始した四輪駆動車「シリーズI」がその歴史の始まり。本格オフローダーとしては、第2次世界大戦中から米軍の軍用車として活躍した米ジープに次ぐ長い歴史を誇る。そして、シリーズIは「ディフェンダー」と名前を変えながら、基本設計を21世紀まで維持して、2015年に生産を終えた。

 つまりディフェンダーとしては、途中の中断を挟んで実に72年ぶりの全面改良となる。その間、ランドローバーは独BMWや米フォードの傘下となったのち、兄弟高級ブランドのレンジローバーやジャガーと共に、インドのタタ・モーターズ傘下に収まっている。

 初代ディフェンダーは、長いモデルライフの中で徐々に内外装は近代化されていったが、堅牢なラダーフレームを頑固に維持するハードコアな四駆であり続けた。

 一方、昨年9月の独フランクフルトショーで初公開された2代目は、21世紀の新設計にふさわしい近代的なハイテク四駆となる。伝統のラダーフレームを捨てて、シャシーとボディーを一体化した一般的なモノコック構造を採用。新設計の総アルミ製で、従来比3倍となるねじれ剛性を実現したという。

ワイルドながらマイルド

 ボディーバリエーションは、ショートホイールベースの3ドア「90」とロングの5ドア「110」の2種類。

 実車を目の前にすると、愛嬌(あいきょう)と迫力のバランスが絶妙なデザインに目を見張る。カタログ上では全高1970ミリ、全幅1995ミリという堂々とした大きさだが、伝統的な四駆らしいクラシカルなディテールと、モダンな柔らかい曲面が融和したデザインのおかげで、圧迫感は感じない。

 このあたり、威圧感と押し出しの強さ一辺倒のドイツブランドや、国産の売れ筋ミニバンとは一線を画す。長い伝統に裏打ちされた、洗練された豊かさの表現は英国車ならではだろう。

 舗装された一般道での乗り心地はマイルドで、標準装備のごついオフロードタイヤを履いているとは思えないぐらい静か。目を閉じて後席に乗っていたら、ハイヤーの高級セダンと言われても疑わないだろう。けっこうな車幅だが目線が高いので見切りは良く、加えて車両周辺の映像が各ディスプレーに映し出され、死角の安全確認を助ける。

 未舗装路でのオフロード走行も体験したが、最低地上高218ミリ、最大渡河水深900ミリ(水深90センチの水中を走行可能!)という、元祖RVの名に恥じない優れた走破性能で難なく走り抜けた。

 廉価版以外に備わる電子制御エアサスペンション仕様では、走行中の車高を4段階で上下でき、「泥/わだち」「砂地」「岩場」といった7種類の走行モードが選択できる。地上に存在するたいていの道は走れてしまいそうだ。

PHV仕様が欲しくなる

 国内導入モデルのエンジンは、ターボ付き4気筒2リッターのガソリン仕様のみ。本国で用意されるディーゼル仕様はない。

 最高出力300馬力のガソリン仕様は、2トン超の車体には十分。燃費を気にしなければオンロードの巡航性能は申し分ない。ただ、ハードコアな四駆のキャラクターにより似合うのはディーゼルのほうだろう。国内導入が待たれる。

 さらに、車中泊をいとわない本格アウトドア派には、キャンプの車内電源に不自由せず、環境性能に優れたPHV(プラグインハイブリッド車)仕様も欲しいところ。本国でも用意されていないが、ジャガーはすでにピュアEV(電気自動車)をラインナップに持っている。悪路走破性との両立が難しそうだが、ぜひノウハウの横展開によるモデル追加を期待したい。

 安全装備としては、車線維持などの運転支援機能やスマートフォンと連動したインフォテインメントシステムといった、最新の電子デバイスも用意する。

 このような充実のスペックで、3ドアの最廉価仕様が消費税込み499万円というのは、価格上昇傾向が顕著な国内ブランドにとっては脅威だろう。特にレクサスのSUV(スポーツ用多目的車)は、同価格帯でのガチンコ比較を余儀なくされそうだ。

 ただ、量販車種「ディスカバリー」も含めてランドローバー車の高級化は進む一方で、上級ブランドのレンジローバーやジャガーにも迫りつつある。グループ内での各ブランドの差別化には親会社も苦労するかもしれない。

明暗を分けた三菱パジェロ

 自らのキャラクターを大事にしながら得意分野を守り育てるブランドと、揺るがない信頼で指名買いする豊かなオーナーたち。

 今年4月の国内受注開始以来、試乗車すら用意されない中で購入を即決する客も多くいたという。ランドローバーは、その幸せな関係性を自身の最大の価値とすることに迷いがない。

 目先のシェア拡大のためにブランドイメージを安売りする廉価モデルを投入して、ブランドの強みや特徴がぼやけてしまうような愚策を、ランドローバーはかたくなに避けている。

 親資本がめまぐるしく入れ替わるグローバル競争で生き残るには、伝統あるブランドの維持強化が欠かせない。長いこと経営が安定せず幾多のメーカー同士の合従連衡に翻弄(ほんろう)されたがゆえの、ジャガー・ランドローバーグループのポリシーなのだろう。

 そんな最新ランドローバー車の出来栄えを見るにつけ、返すがえすも残念に思うのは、海外向けも近く生産終了となる三菱自動車のRV「パジェロ」だ。

 米ウィリス・オーバーランド社製ジープのライセンス生産にルーツを持ち、1980~90年代に世界を席巻した名車だったが、経営難のため4代で消滅を余儀なくされた。三菱自が最盛期の潤沢な開発リソースで「パジェロ」を進化させ続けていたら、きっと新型ディフェンダーの好ライバルになっていたのでは、と夢想すると実に寂しい。

 小規模メーカーゆえの苦難に耐えながら、辛抱強く正常進化を遂げて生き残った誠実さとしたたかさ。国内メーカーも学ぶべき、英国ブランドの底深い実力を垣間見た。(北林慎也)

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August 28, 2020 at 09:30AM
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