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キャッシュレスは、2020年「7月の壁」をどう乗り越えるか? - Lifehacker JAPAN

10月にスタートしたキャッシュレス・消費者還元事業は、複雑な仕組みで実際にどれだけの人が利用するかはじめは心配されていました。

蓋をあけてみると、電子マネーやQRコード決済といったキャッシュレスがよく使われ、近くのコンビニでは、昼休みにできるレジの行列が午後にも、夕方にもできるようになったのを体感するほどです。

これは、大手コンビニなら必ず2%がその場で割引になり、しかもそれがレシートにきちんと記載され「得」を実感できるから、お客が集まっているのではないでしょうか。

キャッシュレス普及は順調に進んでいるが

キャッシュレス支払い
Image: Shutterstock.com

キャッシュレス決済の利用者数は、全体的に順調に増えています。

いよいよキャッシュレスが本格的な普及に入ったと言える今、この調子でいくと現在20%程度の日本のキャッシュレス比率は、早晩30%に届くと思われます。

それと同時に、政府は中小店に対してクレジットカードや電子マネーの専用端末の設置に補助金をだして促進を図っています。

それらの機材をほとんどタダで店舗はもらえる仕組みであり、平常は3~7%といわれている加盟店手数料を約2%まで引き下げてキャッシュレスの導入を図りやすくしています。

そのため、キャッシュレスの手数料は中小店では、10月から来年6月30日までは、2.17%という低率で提供されています。

その影響もあり、先進的な小売店は続々キャッシュレス化を進め始めたというわけです。

利用者も、身近な中小店で5%ポイント還元が受けられることに気づいてからは、様々なキャッシュレスのツールを使ってお得を獲得しようと躍起になっているのです。

キャッシュレスの壁が「2020年7月」に立ちはだかる

壁を乗り越えようとする男性
Image: Shutterstock.com

しかし、キャッシュレスの春は長くは続かない…。なぜなら、この制度は来年の6月30日には終了してしまうから。

ポイントだけでなく、手数料の優遇もなくなり元に戻ったら、利用者の多くと店の経営者たちはその影響をもろに受けます。

この制度変更は、「7月の壁」と呼ばれており、すでに店主たちはそれに備えて、忖度し身構えています。

現在実施されている手数料の低利率政策は、経済産業省とカード会社の取り決めで実現したものですが、その際に2020年7月以降は利率をもとに戻すと言う約束があったといわれています。

つまり7月からは元の3%〜7%に手数料を戻すと経済産業省は約束させられているということ。それが事実であれば、7月からの手数料率の引き上げ(これまでの手数料に戻る)は確実にあると思っておいた方が良いでしょう。

店側の手数料アップがネックになる?

青果店と店主
Image: Sukanlaya Karnpakdee / Shutterstock.com

こうなると中小店にとっては地獄です。還元事業に乗ってカード事業を始め、そしてやっと固定客の取り込みに成功して順調な流れになろうとしているタイミングで、手数料が元の3%〜7%に引き上がれば、儲けは吹っ飛ぶかもしれない。それでは、とてもキャッシュレス環境の継続はできないはずです。

それがわかっているからこそ、中小店は、「7月の壁」を前に、キャッシュレスを続けるべきか、止めるべきか、迷っています。

一方、利用者も5%のポイント還元がなくなると、必要以上の買い物を控えるようになるのでしょうか。

また、お得がないのに、わざわざキャッシュレス決済を使う必要はなくなるから、元の現金社会に帰っていく人も…いるかもしれません。

現金は、キャッシュレスのスピードに勝てない

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StreetVJ / Shutterstock.com

そんな風に、一方的にキャッシュレスの失速を懸念する人たちもいますが、私は、「現金社会に帰るというのはキャッシュレスの威力を知らない者がいうことだ」と思うのです。

利用者は、一度スピーディな決済を体験すると、もう現金には返れないと実体験で断言できます。Suicaで0.2秒の決済のスピードを味わったら、もう手放せなくなってしまったように。

Suicaが導入されてから、すでに20年近く経っていますが、再び現金を主体で使おうなど考えたこともありません。

人間は安易だから、便利な方に流れる、それはキャッシュレスも例外ではないと思うのです。

そう思えば、ポイントが付こうが割引があろうが、現金はキャッシュレスのスピードには叶いません。この先は、きっとスピードが最優先されるようになっていきます。

キャッシュレス普及はどうなる?

キャッシュレス端末
Image: Shutterstock.com

そうしたスピードが求められる中で、「7月の壁」のせいで、キャッシュレス決済が利用のできる店が激減してしまったらどうなるか?

キャッシュレスが利用できる店に、皆が集中するようになっていくはずです。そうすれば、コンビニや大手チェーンは、さらに儲かるようになるのかもしれません。

だからこそ、いまが最も大切な時です。還元事業で獲得した利用者のよい体験を潰さずに大切に育てることを考えていくべきだと思います。

あわせて、店主のよい体験も潰さずに大切に育てるべきでしょう。

それにはポイントの継続を7月以降も行い、店には手数料などの補助を続けることしかありません。少なくとも2020年内は補助を続けるべきではないでしょうか。


また2020年9月からは、マイナンバーカードのポイントサービスの実施が検討されています。これには25%ポイント還元も含まれており、これも大きな騒ぎになりそうです。

ひょっとすると、このカードに合わせるために、政府は還元事業の終了時期を2021年3月(マイナンバーカードのキャンペーン終了時期は要確認です)まで延長するかもしれません。

そうなればキャッシュレスが我が国に根付く可能性は高まります。

しかし、税金はさらにかかりますし、マイナンバーカードは異質なものですから、こちらはこちらで慎重に考えなくてはなりません。

決して、キャッシュレスの他のカードと一緒に考えないでおかないと、やっかいなことになりそうです。考え所ですね。

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岩田昭男(いわた・あきお)/消費生活ジャーナリスト

岩田昭男

早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

>>公式サイト

Image: Shutterstock.com

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