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新型コロナ:世界株、危機下の急回復 大規模政策が楽観生む - 日本経済新聞

世界の株式市場に急ピッチにマネーが流れ込んでいる。日経平均株価が8日、3カ月半ぶりに2万3000円台を回復するなど、実体経済の回復軌道が「U字」や「L字」と予想されるなかで株価は「V字」回復した。過去にない規模の財政出動と金融政策が楽観を強めている。感染の「第2波」が厳しく政策の限界も意識されれば、反動安となる懸念もくすぶる。

8日の東京株式市場で日経平均は6日続伸し、終値は314円(1%)高の2万3178円だった。新型コロナウイルスの感染拡大で株価が急落する前の2月21日(2万3386円)に迫った。今年の高値(2万4083円)比でも96%の水準だ。世界全体の株価の動きを示すMSCI全世界株指数も、今年の高値比で9割以上になった。

わずか3カ月半での9割回復は、過去の危機と比べると異例の速さだ。00年のIT(情報技術)バブル崩壊時や、07年に株価がピークをつけた金融危機では、高値回復に6年以上かかった。15年に中国景気が急減速した「チャイナ・ショック」でも2年弱かかった。

投資家は、景気指標の持ち直しを買い材料視している。5月の米雇用統計では雇用者数が事前予想に反して増加した。「想定以上に早く一定の水準まで経済は戻るのでは」(三菱UFJ国際投信の野崎始氏)との見方が出始めている。

もっとも、なお人の移動は制限され、消費の回復も鈍い。米モルガン・スタンレーは、世界主要10カ国・地域(G10)の4~6月の国内総生産(GDP)は19年10~12月に比べて15%ほど落ち込み、元の水準を回復するのは2年後の21年10~12月とみる。リーマン・ショックではG10のGDPが08年4~6月の水準に戻ったのは3年半後の11年10~12月で、株価の回復も連動した。今回はGDP見通しと比べても株価の戻りが速い。

一般に株価は半年から1年先の経済を織り込むとされるが、「実際の経済再開ペースに比べ、かなり期待先行で株価は上げている」(ゴールドマン・サックス証券の石橋隆行氏)との声がある。

企業の利益水準は下がっている。世界の主要企業の4~6月期の純利益は前年同期に比べ5割ほど減る見通しだ。日本企業の21年3月期の純利益はピークに比べ2~3割減にとどまる見込みで、「株価は22年3月期の大幅増益を織り込んでいる」との声も聞かれる。

楽観ムードを支えているのが、大規模な政策だ。国際通貨基金(IMF)によると、20カ国・地域(G20)の財政出動(ローンや政府保証除く)はGDPの4.6%に上る。リーマン・ショック時は08~10年の3年間合計で4.3%だった。

金融緩和の効果も大きい。米連邦準備理事会(FRB)の直近の総資産は7兆973億ドル(約770兆円)と3カ月で3兆ドル近く増えた。日米欧中銀の総資産合計は10年前の3倍になった。

中銀が大量に国債を購入し、残存期間が長い債券まで利回りが低下した。主要国の国債を指数化した「FTSE世界国債インデックス」では利回りは0.3%台だ。世界の投資家が金利収入のよりどころにしてきた米10年債利回りも1%を下回る。利回りを求め、年金基金などは株式に資金を振り向けている。

コロナ禍で、中銀が国債の増発を支えるようになった。「財政ファイナンス」とも呼ばれる禁じ手だが「財政を拡大できる余地が広がったという期待感」(米運用会社)が強まっている。

次の焦点は9~10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)。FRBの株高への反応に市場の関心が向かっている。「金利上昇を許容する方向に転換すれば、市場心理は一気に悪化する」(アムンディ・ジャパンの岩永泰典氏)との指摘もある。

(長谷川雄大、二瓶悟)

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