アクセス集中を知らせるシャープの公式サイト
シャープ
4月21日、シャープは、自社サイトで同社製マスクの販売を開始した。
だが、その販売は大きな混乱に見舞われた。販売サイトへのアクセスが滞っただけでなく、同社の家電製品の動作にまで影響を及ぼしたからだ。シャープでのマスク販売開始と前後して、「スマートフォンアプリからシャープの家電が操作できなくなった」との苦情が上がり始めた。
いったいなにがあったのか? そこからは、シャープの経験不足と誤算が見えてくる。だがその根底には、現在のオンライン販売が抱える大きな課題も浮上する。
マスク販売から「シャープのネット家電」にも波及したトラブル
シャープ
マスクの販売開始は、4月21日午前10時から、とされていた。シャープの会員制ECサイト「COCORO MEMBERS」は、その数日前から混雑し始めていた。購入にはユーザー登録が必要だったからだ。
「ウェブサイトが開きにくい」「登録のためのコード番号がメールで届かない」などの声がSNSでは上がり始めていた。
けれども、それは、当日起こるトラブルに比べれば、軽いジャブに過ぎなかった。
販売開始の4月21日10時が近づくと、「COCORO MEMBERS」にはいよいよアクセスが集中し、そのうち、ほとんどの人に表示されなくなった。シャープのTwitterアカウント担当者が「私にもマスクのサイトは見えなかった」とぼやくほどだ。
「マスクのページ、私ですら今日一度も見れませんでした。ご迷惑おかけしたみなさま、申し訳ありません。」
それと前後して、シャープのネットワーク対応家電を使っている人々から、奇妙な現象の報告が上がり始めた。
「スマホアプリでログインエラーが出て、スマホから家電が操作できない」
「レシピのダウンロードにいつもより時間がかかる」
「スマホに入っているアシスタントアプリが動かない」
ネットワーク家電を使っている人々は、もちろん、マスクを買おうとしている人々とはなんの関係もない。
その後、10時を過ぎて「COCORO MEMBERS」のサイトにアクセスできなくなると、家電をスマホアプリから操作するのも、同時に困難になっていった。
結局、「COCORO MEMBERS」でのマスク販売は、22日夜になっても復旧できていない状況だ。
シャープのネットワーク家電でのトラブルは、「COCORO MEMBERS」へのアクセスが落ち着くとともに解消し始めている。だが現在も、「認証動作の遅さ」などのトラブルが完全に解消したわけではない。
「21日のマスクの販売は終了した」ことになっているが、次にいつ販売されるかは、まだ公開されていない。
桁違いの人数がサイトに殺到、「サイバー攻撃」と誤認
写真はイメージです。
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シャープのマスク販売サイトのトラブルは、「人が集まりすぎたこと」が原因だ。
ECサイトに人が集まり過ぎて落ちる・アクセスができなくなる、という現象そのものは、決して珍しいことではない。この時期にマスク、となれば、家電製品などより、圧倒的な量の人々がやってくるのは当然だ。
けれども、今回のトラブルが拡大した理由は多層的な側面がある。
まず、アクセスしてきた人数がシャープの想定とは文字通り「桁違い」だったと想定されることだ。
ではどのくらいだったのか? シャープ広報は「実は、把握できていない」と答える。
なぜなら、「サイトが落ちる前に」セキュリティが働いてしまったためだ。
同社では、セキュリティ対策として、不正なアクセスを遮断するファイアウォールをサービス内に組み込んでいる。多くの企業は「DDoS攻撃」と呼ばれるサイバー攻撃に悩まされているが、その対策のためだ。
DDoS攻撃は、大量のアクセスを短時間に行うことで、サーバーへの侵入やサービス停止を試みる。そのためファイアーウォールは、「その企業のサービスとして想定し得ない量のアクセス」を、DDoS攻撃と認識して止める。
今回は、その「想定し得ない量のアクセス」が会員制ECサイト「COCORO MEMBERS」に集中した。
結果、ファイアーウォールは、殺到する購入希望者をサイバー攻撃と誤解し、サービスを止めてしまった…というのが真相だ。
家電機器との「認証サーバー共有」がトラブル拡大の引き金に
シャープの「COCORO MEMBERS」トップページ。4月22日22時時点ではこうしたお詫びメッセージが表示されていた。
シャープ
ここにさらに、シャープにとってもう一つの想定外が加わった。
シャープのネット接続家電は、「COCORO MEMBERS」への接続を前提に作られていた、ということだ。
同社の家電では、より賢く家電が働くように、ユーザーの利用状況を蓄積する仕組みが用意されていた。家電そのものがアクセスするだけでなく、スマホをリモコン代わりに使う専用アプリを経由して、インテリジェントな操作を実現している場合もあった。
スマホアプリなどは、まず「COCORO MEMBERS」でユーザー認証を行い、それから動く仕組みになっていた。
しかし今回は、「COCORO MEMBERS」へのアクセスが増え、ファイアーウォールがアクセスを遮断した。すると、マスクの購入希望者だけでなく、「ネットワーク家電を操作しようとするアプリ」などのアクセスも遮断されてしまったのだ。
これが、シャープのネットワーク家電で動作トラブルが起きた原因だ。
シャープが見誤った「入り口の共有」の負の連鎖
シャープ本社。
シャープ
ネット上には「シャープの家電は、すべて同じサーバーで動いている。だから動かなくなった」との推測もあったが、シャープ側の説明によれば、これは正しくないという。
まず、ネットアクセスに関係ない機能、例えば通常のリモコンで操作することなどは、問題なくできた。
また、認証が「COCORO MEMBERS」とは別のサーバーで動いていた同社のテレビ「AQUOS」も、動作不良を起こさなかった。
認証以外の作業は「COCORO MEMBERS」とは別のサーバーであるので、これも動作に問題はなかった。ただし、同社へのアクセスが増えた関係から、動作が遅くなったりしたことはあったようだ。
実は、シャープのネットワーク家電サービスである「COCORO+」は、コアがアマゾンのクラウドインフラサービスである「AWS」で動いており、混雑に合わせた対処には、本来比較的強い。
しかし、マスク販売のような、家電へのアクセスとはレベルが違う数のアクセスが来ること、そして、認証サーバーという「入り口の共有」が問題を引き起こすことを、シャープは読み切れなかった。
マスク販売は、22日夜の段階でも再開されていない。シャープ広報は「再開の予定はまだ決まっていない」と話す。
現在同社内では、原因の完全な究明と復旧、今後の対策に向けた作業が進められている。
シャープ広報は、
「最優先は、弊社のネットワーク家電を利用していただいている皆様に、これ以上のトラブルが起きないようにすること。その作業をまず進め、そののちに、マスク販売の再開を検討したい」
と話している。
需要が高すぎる商品に、ECサイトはどう対処するか
アクセス集中によるNintendo Switch抽選販売延期をしらせるビックカメラのおしらせ。
ビックカメラ
どんなECサイトも、アクセス集中によるトラブルは起きる。
特に現在は「巣ごもり」中であり、ただでさえECサイトの利用率は平時より増えている。日本有数のECサイトの一つであるビックカメラの公式サイトですら、マスクよりずっとニーズが低いはずのNintendo Switchの販売の影響で、一時アクセス不能に陥っている。
特に、マスクのように「あらゆる人が注目する」製品の場合、販売の情報はあらゆるメディアで拡散される上に、いつもならECサイトで買い物をしないような人まで購入を試みる。
マスク販売を手がけるECサイトは、どこもアクセス集中に悩まされている。
アイリスオーヤマのECサイト「アイリスプラザ」も、マスクの販売開始以降、アクセス集中で遅くなっている。サイトには「つながりにくい時間がある」旨の注意書きがある。
アイリスオーヤマのECサイト「アイリスプラザ」のマスク販売についての4月22日分のおしらせ。
オンラインショッピングでは一般に、「何時から販売開始」というアナウンスを避ける傾向にある。そうすると、その時間を狙って多くの人がやってきて、販売開始時間に合わせたアクセス集中が起きるからだ。
今回のシャープのミスは、鉄則である「定時からの販売回避を行わず、マスクという製品に人々が集まる量を完全に見誤っていた」ことに起因する。
そもそも、アクセスしづらいサイトに皆が集まって、買えた・買えないで一喜一憂している状況は不健全だ。マウスをひたすらクリックしている多くの人と、ツールなどを使って一気に大量のアクセスをかける転売業者との間での不公平もある。
アクセス集中を避け、トラブルなく公平に必要なものを売るためには、「事前登録による抽選」「公平なアクセス制限による販売」などの施策が必要だと筆者は考える。
(文・西田宗千佳)
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April 23, 2020 at 03:36AM
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